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緩い囁きに混じっていつか消えてしまうような約束をしたことがある。 約束をきちりとした重みで捉えている日本のことを香港は好ましく思っていた。優しげな様子とは異なり、凛とした強さが立つような日本の立ち振る舞いには憧れていたし、そういう風になりたいとも思っていた。兄も約束には厳しいほうであったので、香港には自然と「約束」の二文字を言うときには肩に力を込めるような、強い意志を込めるようになった。 「香港さんと交わす約束は、いつも厳粛なものに思えます」 いつだったか、日本が薄く笑みを見せながら呟いた言葉に 香港はとても嬉しくなった記憶がある。貴方が呟く言葉の重さに似たいと思っていたのです。そう呟けなくて結局は視線を伏せるのみになってしまった香港に、あの時日本は笑みを限りなく見せ続けてくれていた。 「いいですか、人が他者と交わす約束は限りなく重いものです。人によって成り立っている私たちは、より一層の強さを持って約束を捉えなくてはなりません。約束したことは、確実に守りなさい」 日本の言葉に、香港は従順に頷いた。約束をそもそも守らなかったらこの世の中はどうなってしまうのだろう。考えただけで恐ろしかったけれど、香港はその恐ろしさも受け入れて日本の言葉にもう一度頷いたものだった。 「俺は いつか帰ってきます」 香港は呟き、相手のいない部屋の中で日本の名前を読んだ。約束にはならない呟きは空気の中にすぐさま溶けていってしまう。香港は、日本がなぜあんなにも約束を重要視していたのか何となく理解しながら眉をひそめる。もう少しで住み慣れた東を 心の中で離れてしまうのは自分にとってどんな変革になるのだろう。香港は今の状態では分からないことを延々と考えることで、類まれな不安から目をそらすことに成功する。 「だから 帰ってきたら 貴方は貴方のまま 笑っていてください」 香港は呟いて、悲しみのままに目を閉じた。香港の心からの頼みは相手となる日本がいないためただ「願い」として片付けられる。 (この約束を守らない約束を してください) 香港は心の中で呟き、悲しみのままに今目の前にいない日本を思った。 約束を、守るな (だって、俺はもう 変わらないものなどなにもないことを知っている) |