肉厚のある、美味なばかりの感情を頬張っては幸せに浸る。快楽を永遠に味わいたくて 一時のものになどしたくなくて、わざと放置してしまえば腐ってしまうことは何となく理解していた。

「日本兄」
密やかに 空気を乱すことが無いよう配慮された香港の声音に日本は目を丸めて応じた。香港は手の中に小型の蒸籠を抱えて立っている。日本がじっと蒸籠を見つめていると、香港は日本の視線に気づいた様子で蓋を開き、ほかほかとした白い湯気に包まれた饅頭を取り出した。
「包子」
「 ああ、どうも 」
香港は静かに日本へ饅頭を押し付け、自分も残った一つの饅頭を手に取り蒸籠をことりと机の上においた。もふもふと饅頭を口に運ぶ香港を見つめていた日本は、するりと自分の手のひらの上っ面を焼くような熱さを秘めた饅頭に視線を落とし、一口齧る。日本で販売されているものよりも薄い皮がべたつかない程度の肉汁が舌を熱で刺激したかと思えば、中華葱が歯ざわりのよさを残した音を立てる。
「中兄の南では ブレックファースト代わり」
「確かに 優しい味ですね」
日本が感嘆の声を上げると、香港はつい と視線を持ち上げたまま饅頭を口に運んだ。美味しい、日本は香港の視線に気づき、真っ当な感想を述べて薄く微笑む。香港は日本を見つめていた行為をやめ、無表情を露ほども移ろわせることも無くもぐもぐと口を動かした。深遠の瞳は感情が読めず、日本はただ用意された饅頭を食べることに専念する。
「冷めたら 美味しくなくなるから」
香港は呟き、ぱくりと最後の一口を食べきったかと思えば日本をしっかり見据えて首をかしげた。さらり、と髪が揺れる香港が一言自分の名前を零す様を見ていた日本は 半分ほど残っている饅頭を食べる手を止めて香港を見つめ返した。
「美味しいときに 食べて欲しい」
香港はそう続け、小さく眉を歪めて日本の頬に唇を寄せた。ふわりと香った饅頭の匂いがやたらと察知できる口付けに、日本は驚いて肩を揺らしてしまう。香港はするりと蒸籠を持ち上げ、日本のいる部屋から出て行った。

「・・・そんな そんなのは 卑怯ですよ」
日本は饅頭を食べている際に零れてしまった肉汁を舌でぬぐい、真っ赤になった頬をごまかすために饅頭を口に運んだ。



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無表情に何でもやっちゃう香くんもえる