どうしたって、変わりようのない思いはあった。


香港は感情を制御する術を上手く心得ていた。無表情といわれることはあっても感情豊かといわれることはなく、両極端にしか性格を表すことができないのならば前者でいいと常々考えている。感情が豊かなのはいいことだけれども、重要なことを重要なときに見極められるのはきっと感情を停滞させることのできる者だ、香港はそう信じていたし、その考えはいたるところで裏づけされた。

「日本兄」
香港はくすぐったげに身を捩じらせて、髪を撫でてくる日本に視線を送った。日本はおっとりと落ち着いた風に笑みを見せながら、首をかしげて香港の訴えを聞かなかった振りをする。髪を丁寧に梳かれる間は香港は日本の顔を見ることができなくなり、触れる指先だけだいやに感じられて悲しくなる。
「もう少しですから」
しゃくん、と髪に鋏を入れた日本は、楽しげに囁いて再び櫛で香港の髪をといた。はらはらと切られ空中を落ちていく髪をぼんやりと見つめながら、香港は楽しげな日本の様子に目を細める。
「香港さん、今のんびりしてるでしょう」
日本は楽しげにつぶやく。感情を見破られた気がしてバツが悪くなった香港へ、日本は楽しげに笑って仕上げとばかりに香港の襟元を軽く払った。
「日本兄は、いつでも俺の考えてることが、分かるみたいだ」
「何年来の付き合いだと思っていらっしゃるのですか」
当たり前のことですよ。少しだけ得意気に囁かれた日本の声へ、香港は目を細めながら首をかしげた。日本の笑みに答えて小さく笑みを浮かべる香港へ、日本は鏡を広げ首尾をたずねる。
「・・・うん、良い」
香港は笑みを見せながら呟き、日本をようやく見上げて目を甘く細めた。今浮かべた感情をいつもいつも届けたいのはたった一人であるのだと気づいた香港は、まるで自分でかけてしまった抑圧をむしろ喜ばしく思いながら日本へ礼の言葉を述べた。



柔らかな束縛に似た